一年以上前にこんなアンケートをとった。
@モータに関わる技術者各位
一般の技術理解水準が知りたく、アンケートにご協力お願いします。
磁石同期モータで、2極3スロットと4極3スロットでは、ステータ回転磁界とロータ回転方向が逆転する、ということを
— 清水 悠生/Yuki Shimizu (@YuYuMoYuYu) April 21, 2024
極スロコンビネーションに対する同期モータの回転原理を、モータに関わる技術者はほとんど知らないらしい。
かく言う私も、ドクターの学生のころ(?)に赤津先生に飲みの場で「3スロモータで2極と4極とでは回転方向が異なるんだよ。なんでか分かるか?」と言われて即答できなかった。当時は自動車用の8極48スロットという素直なモータばかりやっていたせいもある。
コロナが明けていろんな企業技術者、大学研究者に聞いて回ってみたが、モータの設計開発で集中巻の分数スロットモータを扱っている人でも、結構この質問に答えられない人が多かった。このあたりの理論が、物理的直観的な解釈が難しいからかもしれない。
最近も極スロコンビネーションについて考える機会があったので、思考を整理する。
理論
前提は、3スロット、3相平衡・時間高調波なしのモータ。起磁力はステップ上に分布すると仮定。
- 機械角:
- 各相コイルの配置(中心位置):
- 各相巻線の空間分布(簡易ver):
- 三相平衡電流(時間高調波なし):
この前提の場合、ステータの起磁力(MMF)はこうなる。
注意されたいのが、時間高調波はないが空間高調波はある、という点。巻線関数が正弦波ではないので。これを可視化したのが以下。空間FFTの1~3次の結果ものせている。

コードはこちらに。
なぜ2極/4極で逆回転するか?
そもそも同期モータは、ステータ回転磁界とロータが同期して回転する。その同期対象は、ロータの極数が2(N,S)ならステータ起磁力の基本波(動画の緑破線)、極数が4(N,S,N,S)ならステータ起磁力の2次高調波(動画の赤破線)である。これは、同じ周波数成分でなければ、トルクの1周分の平均が0になるからである。
動画を見ると、ステータ起磁力の2次高調波は基本波に対して逆方向、かつ、半分のスピードで回転する。これが、2極/4極のロータが逆回転する理由である。同期対象がそうなっているから、ということだ。
ちなみにステータ起磁力の3次高調波は存在しない。そのため、6極のロータはそもそも回転しない。直感的には、例えば60-180°区間など、空間3次に相当する一周区間でMMFは一定値を取り、そもそも3次高調波として現れる成分が存在しない(3次高調波成分に直交する)。これは3n次高調波にも言えることなので、6n極のロータではトルクが発生しない。
なぜステータ起磁力の1,2次成分は逆方向に進むのか?
これを理解するのがなかなか難しい。FFTしたらそうなったから、と言ってしまえばそれで終わり。
一応私はωのワルツ的に理解している。

まず、ステータの巻線分布を複素数平面で捉える。3スロの相中心は機械角で 。
ここで、1の3乗根 を使うと、空間内のuvw相巻線は以下のベクトルと等価。
この場合の起磁力は、以下に比例する。(このベクトルは、各相巻線の空間分布全体ではない)
そして、巻線ベクトルを、電気角(ロータ側からの視点)で捉える。ロータの極対数を
のように捉えられる。(
極数を変えていくと、このベクトルは以下のふるまいをする。

2極ならu→v→w、4極ならu→w→vの順番なので、逆回転。6極の[1,1,1]は零相を意味し、三相平衡では、以下のように同期成分が打ち消される。
このアイデアのよいところは、多相多極多スロにも拡張性がある点。多相はそのままベクトルの数を増やせばよい。多スロは分数スロットのときが少しややこしいが、電気角1周期あたりのスロット数Lを考えると、Lが3の倍数なら回るし、そうでないなら回らない。回転方向は多スロでも(時間高調波を無視した場合)
ここで、S:スロット数、
今求めたいのは、電気角でちょうど1周期(
となり、これがそのまま電気角1周期あたりのスロット数
数学的には理解できるが、物理現象からはかけ離れてしまうのが難点。もっといい捉え方があったら教えてほしい。
