埋込磁石同期モータのモータパラメータを機械学習によりモデリングし,最適化設計時間を短縮しました!【論文解説】

論文

論文がIEEJ Journal of Industry Applicationsに出版されましたので,ご紹介します。

論文タイトルは

Using Machine Learning to Reduce Design Time for Permanent Magnet Volume Minimization in IPMSMs for Automotive Applications

です。

埋込磁石同期モータの最適形状設計では,有限要素解析を繰り返し実施することから,規模によって数時間~数週間といった長期間を要します。

そのため,有限要素解析を用いずに形状特性を算出する方法として,機械学習を用いた「サロゲートモデル」が注目されています。サロゲートモデルは形状と特性の間の非線形性を学習し,両者の関係を関数化するため,有限要素解析を用いずに特性を算出することが可能となります。

本論文では,埋込磁石同期モータの速度ートルク特性を高精度に予測するサロゲートモデルの構築法について説明し,サロゲートモデルを用いて最適化設計を行うことで短期間で設計が完了することを示しました。(有限要素解析を用いた最適化設計に比べて2.9-6.9%にまで計算時間を短縮。)本研究の特筆すべきポイントは下記のとおりです。

  • 速度―トルク特性を直接予測対象とするのではなく,モータパラメータ(永久磁石による電機子鎖交磁束,d,q軸インダクタンス)を予測対象とすることで精度向上
  • 3つの機械学習手法の中から適切な手法を選択
  • 最適化設計時にモデルの適用範囲制約を設けることでサロゲートモデルの予測精度を保証

詳細に関しては,ぜひ論文をご覧いただければと思います。

本論文で使用した手法は以下で解説しています。

リッジ回帰(Ridge Reression)とLASSOー過学習を抑制する正則化最小二乗法ー【Pythonプログラム付】
統計や機械学習において最も基本的な回帰分析手法は(通常)最小二乗法(OLS:Ordinary Least Squares)です。 しかし,データの量や性質によっては回帰係数がデータに過度に適合する過学習が生じる可能性があり,回帰曲線の...
サポートベクター回帰(Support Vector Regression)ー数千のデータセットに対して最強の非線形回帰分析!ー【Pythonプログラム付】
ビッグデータを活用した Deep Learning が現在すさまじい発展を遂げていますが,以前まではサポートベクターマシン(Support Vector Machine)が主流でした。 工学分野ではデータの入手コストが高いことも多く,...
非常に強力な決定木のアンサンブル法ーランダムフォレストと勾配ブースティング決定木ー【Pythonプログラム付】
決定木は直感的にわかりやすい学習手法ですが,汎化性能が低い(バリアンスが高い)という欠点があります。そのため,複数の決定木を組み合わせて学習を行うアンサンブル学習が一般に用いられます。特に XGBoost や LightGBM は Kagg...
1クラスサポートベクターマシン―異常検知に用いられる教師なし学習の手法!―【Pythonプログラム付】
モータの分野では,巻線短絡などの電気系の異常からシャフトやベアリング不良などの機械系の異常まで,様々な異常を入手可能な少しの情報から検知したい場合があります。こうした課題を解決するため,機械学習には異常検知と呼ばれるタスクが存在します。本記...
実数値遺伝的アルゴリズムの世代交代モデルと実数値交叉【Pythonプログラム付】
遺伝的アルゴリズム(GA: Genetic Algorithm)は生物の進化過程を模倣した最適化アルゴリズムで,その汎用性から様々な場面で用いられています。本記事では,遺伝的アルゴリズムの中でも実数ベクトルを扱う実数値GA(RCGA: Re...

 

以上です。質問・コメント等ございましたら,問い合わせフォームや下部のコメント欄,メールやTwitterよりご連絡ください。

タイトルとURLをコピーしました